意見陳述(場所選定上の問題)
- nara-justice
- 2018年4月4日
- 読了時間: 6分
更新日:6月16日
平成30年4月4日
奈良市監査委員 殿
奈良市新斎苑現建設地の場所選定上の問題点について
請求人代表 厚井弘志(工博、環境計量士)
1.公共施設の立地を決定するに際し、都市経営に携わる市長はその責任において、幾つかの候補地の内から合理的判断基準に基づき、議会や市民に説明できる場所を提示する義務がある。
2.奈良市域には旧土地開発公社が保有していた遊休地が多くある(資料1.奈良市土地開発公社解散プランの16ページ)。
これらの内主なものを示すと、(1)西ふれあい広場建設事業用地(二名)、(2)公園建設事業用地(奈良阪町)、(3)JR奈良駅周辺地区整備事業用地、(4)体育施設整備授業用地(横井町)、(5)中ノ川造成事業用地(中ノ川、芝辻町)がある。(資料2.最終報告書、平成23年3月28日、奈良市土地開発公社経営検討委員会)。
3.奈良市が現候補地に新斎苑の建設場所を決定した根拠として奈良市長が議会に提示したのは資料3.「新火葬場建設候補地として検討された場所の評価と断念・廃案となった理由(過去20年)」のみであり、断念・廃案となった理由としては、
(1)土地取得が困難
(2)周辺環境(住宅等)
(3)道路(幹線道路の課題)
(4)その他(利便性)
に関し、「それらを総合的に判断し、法連佐保山(奈良ドリームランド跡地)が選出された。しかしながら、約2年間交渉するも地権者の同意が得られず断念。」と記載されているのみである。
これ以外の資料は一切公表されておらず奈良市及び奈良市長が具体的に如何なる検討を行ったのか、地元住民と如何なる話し合いを行ったのかが一切不明である。
4.請求人代表は独自に杏町案を入手し資料4のように、建設工事、安全性、自然・環境条件及び地質・地盤、奈良市墓地等の経営の許可等に関する条例との関係、地元及び周辺住民の同意、土地取得の容易性、社会経済条件、道路交通条件等を考慮に入れ、比較検討を行った。ほぼすべての項目について杏町案の方が有利であった。 5.また、上記、西ふれあい広場建設事業用地(二名)、公園建設事業用地(奈良阪町)、体育施設整備授業用地(横井町)、中ノ川造成事業用地(中ノ川、芝辻町)と現建設予定地とを比較すると、
(1)公道に近接しており、新規に取り付け道路を建設する必要がない。
(2)市有地であり、土地購入価格がゼロである。(約3.5億円有利)。
(3)橋梁建設の必要がない(約6億円有利)。
(4)大規模な土地造成の必要がない(数億円程度有利)。
(5)現計画のような掘割道路の建設の必要がない。(少なくとも数億円は有利)
(6)現建設地には過去に産業廃棄物が投棄されておりその処理費用(1億4千万円)を奈良市が負担することになっているが、これらの場所では産業廃棄物処理の必要は無い。(中ノ川造成用地(約16ヘクタール)には一部産業廃棄物が埋設されている場所があるが、当該場所は積水化学工業誘致のため買い増しされた土地であり全てに産業廃棄物が埋設されている訳ではない。) 上記のいずれを採用したとしても約20億円程度あるいはそれ以上の経費節減が見込めると考えられる。
すなわち現建設地より経費、利便、安全その他の点から有利な場所がある。
6.奈良市墓地等の経営の許可等に関する条例について
奈良市及び仲川市長は現建設地を選定した理由の一つとして標記条例第8条の(1)住宅等の敷地から250メートル以上離れていること、を根拠としてきた。
しかし、以下で述べるように市街地に立地している火葬場は他市に幾つかあり、環境汚染技術が進んでいるため山間部に立地させる必然性はない。
また、同条の(2)道路等から250メートル以上離れていること、については、斎苑にアクセスできる道路近傍には立地できない、あるいは新たに道路を取り付けなければならないという不合理な規定である。
さらに同条の(3)がけ崩れ、地すべり等の災害のおそれが少ないこと、を考慮すれば現建設地は最も望ましくない場所であると言える。
7.奈良市長には現建設地が最も有利な場所であること、あるいは現建設地しかないことを、請求人が行った以上の合理的根拠を持って説明すべきであり、明らかにこれを隠蔽あるいは怠っている。
8.また、必ずしも斎苑を一か所にまとめる必要はなく、西部地区及び東部地区の利便を考慮すれば、小規模の斎苑を奈良市内に数か所建設することも検討すべきであるが、こうしたことを検討した痕跡はない。
9.さらに言えば、斎苑は必ずしも山地に立地させる必要は無く、例えば堺市立斎苑(17炉)は堺市駅から徒歩5分の市街地内にあり、大阪市立小林斎場(10炉)市街地内にあり市立小林小学校や大正中学校に近接する。現建設地にこだわる必然性はない。 10.新斎苑計画地の用地購入にかかる予算見積り 奈良市は資料7.「新斎苑計画地の購入にかかる予算見積りの根拠が分る資料」において、「岩井川ダムの用地買収において、奈良県が昭和61年に4,300円/m2で購入している事例」に山林の変動率を乗じて2,566/m2円を算出し、大和不動産鑑定(445円)及び若草不動産鑑定(482円)の各評価額の平均評価額の(463円)との平均をとって1,514円/m2を予算見積もりの根拠としている。
不動産評価に際しては出来るだけ最近の資料を参照すべきところ、奈良市が引用した岩井川ダムの用地買収時期は昭和61年と30年以上前の資料である。
平成29年奈良県地価調査(林地)は資料8の通りであり、参照するのであればこれに拠るべきである。この内奈良(林)-2(生駒郡平群町)は都市近郊林地であり将来の宅地見込もあるため、2,120円/m2と評価されているが、他の林地は16円/m2から191円/m2である。
岩井川ダム建設時に買収した用地の特性は不明であり、奈良市が4,300円/m2の根拠を調べず、任意にこの金額を使用したことは明らかに不当である。 以上、現建設地の選定過程には重大な瑕疵があることを指摘しておく。
資料1.奈良市土地開発公社解散プラン
資料2.最終報告書、平成23年3月28日、奈良市土地開発公社経営検討委員会
資料3.市議会提出資料「新火葬場建設候補地として検討された場所の評価と断念・廃案となった理由(過去20年)」
資料4.新斎苑建設に際しての検討事項(市案と代案の比較)
資料5.堺市立斎苑の立地場所
資料6.大阪市立小林斎場立地場所
資料7.新斎苑計画地の購入にかかる予算見積りの根拠が分る資料
資料8.平成29年奈良県地価調査(林地)
【 参考 】
奈良市墓地等の経営の許可等に関する条例
第8条 火葬場を設置する場所は、次に掲げる基準に適合しなければならない。ただし、当該火葬場を設置する場所が国民の宗教的感情に適合し、かつ、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと市長が認めるときは、この限りでない。
(1) 住宅等の敷地から250メートル以上離れていること。
(2) 道路等から250メートル以上離れていること。
(3) がけ崩れ、地すべり等の災害のおそれが少ないこと。
コメント