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本件が違法であるとの判例

  • nara-justice
  • 2021年6月22日
  • 読了時間: 5分

大阪高裁平成15年 2月 6日判決

① 簡易裁判所が民事調停法17条に基づきゴルフ場予定地だった山林を市が47億5623万1684円で買い取る旨の決定を行い、市が異議を申し立てずに決定が確定した場合において、

② 本件土地の適正価格は合計21億4365万3712円と認められること、

③ 市議会が本件決定に示された買取価格が適正であるかどうかについて調査・審議を尽くさず、手続的にも内規に違反して本件買い取りを是認する議決をしたことは地方議会に認められた裁量権を逸脱・濫用した違法なものであり、地方自治体の財政の適正確保の見地から看過しえない瑕疵が存するものであること、

④ 市長は市議会の議決に際して当然なすべき説明や資料の提出等を怠り、審議の充実を図るために配慮を図るべき義務を怠ったのであるから、本件議決に従って本件決定に異議を申し立てなかった行為は財務会計上の義務に違反する違法なものであることなどから、買取価格と適正価格の差額である26億1257万7972円について請求が認容された。


⑤ 市が山林を約47億円で買い取ることを内容とする民事調停法17条に基づく簡易裁判所の決定に対して異議を申し立てずに同決定を確定させたことは、その代金額が異常に高額であり違法であるとして、適正価額との差額26億円の損害賠償が市長の職にあった者に命じられた。

【解説】

大阪高等裁判所の判決は、適正価格の約2.2倍の購入価格が違法とされ、適正価額との差額26億円の損害賠償が市長の職にあった者に命じられたものである。

今回の買収価格は鑑定価格の約3.3倍であるから、裁判所により違法と判断され、市長に損害賠償が命じられる恐れがあり、市議会による議決も裁量権を逸脱・濫用した違法なものと評価される恐れがある。


大阪高等裁判所平成15年6月17日判決

① 業者が交野市森地域の山林に計画した動物霊園を中止させる名目で、当時の大東市長が土地代金とは別に業者に補償費1億3246万円の支出をしました。

② 大阪高裁は1億3246万円を市に返還することを命じた大阪地裁判決を支持し、同市長の控訴を棄却しました。

③ 判決の中で大阪高裁は、「環境を守るということで、自治体が土地を買うかどうか、幾らで買うかは裁量の範囲ではなく、自治体の予算に限界があり、必ずしも土地を買う必要性、緊急性がない場合には、市長の裁量の範囲内ということにはならず、厳しく制限される。」と指摘しました。

平成17年9月、最高裁は上告を棄却し、大阪高裁の判決が確定しました。

【解説】

 この大阪高裁判決からすれば、本件の防災公園用地のように、必要性が乏しい土地を高額で購入すると、違法とされ、市長に損害賠償命令が下される恐れがあります。

名古屋高等裁判所の判決(平成19年5月30日、上告棄却により確定)

名張市斎場用地訴訟で当時の市長に賠償命令が下されたもので、

① 名張市が斎場建設のために土地所有者に代金の一部を支払い、土地上にあった牛舎や近隣工場に対して解体に伴う損失の補償として金員を支出したことにつき、土地代金について、適正価格を著しく超える代金額の売買契約を締結した違法があったとして、支払済みの代金のうち適正価格を超える額につき市への賠償を命じた。なお、損失補償の部分については請求を棄却(賠償は不要と判断)した。

② 市議会から根拠としている鑑定書を提示せよと特別委員会等で要求されたのに対して売主との交渉の妨げになるとしてこれを拒絶し,議会の最終日になって議事の途中でようやく同鑑定書を提示したものの,付属書類も添付せず,議決後にすぐ回収し,議員らがこれを検討する機会も十分に与えず,買収価格が高過ぎると追及されても「専門的な国家資格を持った不動産鑑定士が・・・導いた結論である」とし,再鑑定に付する意志もないと答弁していたものである。

③ 控訴人(前名張市長)は,本件の個別的な事情を考慮すれば,買収金額について少なくとも適正価格の5割までの幅が許されるべきと主張する。

しかし,斎場建設が本件各土地以外では全く不可能であり,適正価格を上回る支出をしてまで市が早急にこれを取得しなければならないほどの事情があったものとまでは認められないから,前記の適正価格を上回る売買代金の決定が控訴人の裁量の範囲内ということはできず,上記の控訴人の主張は採用することができない。

④ 斎場建設のため,当時の市長が適正な価格を超える土地代金額及び損失補償額で契約を締結したことが違法であり,適正価格を超える2億4941万4130円を支払ったことにより同市が損害を被ったと主張して,名張市が(市長交代後に)当時の市長に対し,2億4941万4130円の支払を求めたところ、名張市側が全面勝訴した。

⑤ 前市長は,本件斎場を本件牧場地に建設することに意欲的で,担当職員も,常にその意を受けて職務遂行に当たっていたと認めるべきところ,担当職員は,牧場主に支払うべき代金及び補償金の総額を,移転先での牧場経営に必要な費用にできる限り近づける必要があると考え,(高めの)第1鑑定の評価額を牧場主に提示したが,了解できない旨の回答を得たため,了解を得られるような高い価格を設定するために再度,鑑定士に鑑定を依頼したという経緯があり,したがって,前市長や担当職員の関心事は,もっぱら第2鑑定の評価額が牧場主の意向に沿うものであるかのみにあったものと推測され,そのため,評価額算出過程の合理性が吟味された形跡は全くないのである。

【解説】

 本件牧場地の取得の条件ともいうべき牧場主所有の牛舎の移転については,牧場主が希望する牛舎の移転先が保安林に指定されており,その解除には相当の困難と期間を要することが当初から明らかであった上、前市長は,このことを認識しつつ,牧場主との間で,本件牧場地の引渡しを解除予定通知からさらに18か月も猶予する内容の協定書を取り交わしているのであるから,前市長が主張するように本件斎場の用地確保が緊急の課題であったならば,そもそも,そのような困難な条件を付され,条件が成就したとしても早期に明渡しのされない本件牧場地を取得の対象として計画を推し進めた控訴人の判断が合理性を有するものであったかには大きな疑問があるといわなければならない。

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